日本から国際養子縁組

日本から国際養子縁組

 

日本から国際養子縁組で海外に渡った子供が、2011~19年の約9年で少なくとも336人に上ることが、読売新聞の集計でわかった。

7割弱が1歳未満の乳児だった。国際養子縁組を巡っては、人身売買に巻き込まれることや、子供の出自に関する情報を得ることが難しくなるといった問題が指摘される。

世界的に減少傾向にある一方、日本からは多数の子供が国外に出ていた実態が浮かび上がった。

 

読売新聞は、国際養子縁組の透明性確保を目的としたハーグ国際養子縁組条約の加盟国が、事務局のハーグ国際私法会議(HCCH)を通じて公開している出身国別の養子の統計や米国務省の資料を独自に集計した。政府は国際養子縁組による子供の出国数を把握していない。

 

 

 集計の結果、11年からの約9年間に日本からの養子を受け入れていたのは、米国とカナダ、フランス、イタリア、ベルギーの計5か国。最多の米国(172人)と、それに次ぐカナダ(160人)だけで全体の98%を占めた。フランスは2人、ベルギーは1人、イタリアは1人だった。

 

年齢別では、1歳未満の乳児が225人で全体の66%に上った。1~4歳は83人で、少なくとも5~9歳は6人、10歳以上も11人いた。1歳未満で性別も判明したのは127人で、男児68人、女児59人だった。

 

国際養子縁組は、国内では民間のあっせん団体が、あっせん先の一つとして手がけてきた。子供がトラブルに巻き込まれるのを防ぐため、18年4月施行の養子縁組あっせん法では、あっせん先を国内とする原則が明記され、団体を都道府県への届け出制から許可制に移行。年別で見ると、11~15年は年間30~40人台で推移していたのに対し、16年は55人、17年は63人に急増。18年は33人と減少に転じ、19年は8人だった。

 

昨年7月に事業を突然停止した東京の民間団体「ベビーライフ」(解散)も国際養子縁組を多数手がけ、336人の相当数に関わっていた可能性がある。東京都によると、ベビーライフが12~18年度にあっせんした307人のうち、174人の養親が外国籍(米国68人、カナダ106人)だったことがわかっている。

 国際養子縁組に詳しい奥田安弘・中央大教授(国際私法)の話「国際養子縁組後の子供の現況について、国や自治体は責任を持って確認をすべきだ。政府が出国を把握していないのは問題で、この間の国際養子縁組について詳しく調査する必要がある」

 ハーグ国際私法会議=オランダ・ハーグに事務局を置き、国際結婚が破綻した際の子供の扱いなど、私人間の国際的な統一ルールの策定を目的とした国際機関。日本を含む88の国と地域が加盟している。