埼玉県虐待禁止条例

埼玉県虐待禁止条例

 

令和5年10月4日、埼玉県議会で虐待禁止条例の一部を改正する条例案が提出されました。

大きな趣旨は「児童を放置してはいけない」というもの。

この条例案10月13日には可決採択されるかもしれません。


昨今起きている車中で亡くなる事故を無くそうとしている条例のように見えますが、実はこの「放置」と言われるものの中には住居や公園、集団下校などで子どもだけになる場合も含まれるようです。

 


条例で禁止されている行為の例

・小学生だけで公園で遊びに行く

・児童が一人でお使いに行く

不登校の子どもが日中家にいる状態で、親が買い出しや仕事に行く

・兄の習い事の送迎時に、弟が昼寝をしていたので起こさず外出する

・ゴミ捨てにいくため留守番させる

・小学校1年生から3年生だけで登下校する

・18歳未満の子と小学校3年生以下の子が一緒に留守番をする

・車などにどんなに短時間であっても残していく


これら全て私の普段の生活で起きています。

私の住む地域では、子ども達は小学校のグラウンド若しくは公園に集まって遊んでいます。

児童館はない上に、校区は広く、こどもたちはもっぱら自転車で行動しています。

もし、その子たちが小学生である場合、条例違反・努力義務違反となり、虐待に当たるということです。そして、これを見つけた県民は通報する義務が発生します。


新聞の記事によれば、「『仕事だから、ちょっとだから留守番させてもいい』という社会慣習をどうにかしないと。

虐待だという認識を高めたい」と埼玉県議団が報道陣に説明したそうです。


これはどういうことなのでしょうか。

親たちは生活のためにやむをえず毎日必死に時間もお金もやりくりしています。

シングルマザーの友人は中学生1人、小学生2人を育てています。

子どもたちは学校からの帰宅後、彼女が仕事から帰ってくるまでの1~2時間、家で宿題をしたりおやつを食べたりしながら待っています。

今回の条例では中・高校生のきょうだいに小学生を預け短時間外に出ることも条例違反や努力義務違反となってしまうのです。


条例よりも、まずは子育てを支援する制度の充実が先なのではないでしょうか? 


埼玉県は学童の待機児童数も全国トップクラス

自治体運営の学童に入れなかった人数は令和5年度で1544人 父母運営や民間学童など暗数ははかり知れません。

せめて、夏休みなど長期休みの時だけでもと熱望してもどこにも空いている枠がない。また、チャイルドシッターなども金銭的にかなり負担となりますし、子どもへの性暴力事件が多い中では不安も伴います。


そもそも学童保育が十分に整備されていないがために、子どもたちに留守番をさせざるを得ないような状況が生まれるのです。

子どもたちを「置き去り」にすることを禁止する前に、まずは学童保育を十分に整備し、置き去りにしないで良い環境を作るのが行政の仕事ではないでしょうか?

条例ではその整備にも取り組むとありますが、その予算などは不明瞭です。


条例を作ったからといって制度が充実する訳ではありません。

先に条例を作るのではなく、「支援制度を先に整備された上で条例を作る」ではないでしょうか。

順番を間違えれば、多くの親が条例違反となり通報対象となるのです。

支援制度の充実がなくては全て夢物語の理想論でしかありません。


私たちは今を生きています。


そして、1年生から3年生までの登下校についても、地域格差があります。

私の住む地域は校区が広いので、学校に50分かけてひとりで歩いてくる子もいます。

別の地域では1時間半かかる子も歩いて行きます。

もちろん、誰か大人が付いていくことができればベストですが、親は働いていて難しい。

となると、例えばPTAや地域自治体からボランティアで人を出してもらうことになりますが、限界があります。

そのしわ寄せは共働き家庭はできないから専業主婦や自営業者で時間の融通のきく人に負担が行くことが容易に予想されます。

行政が見守りを外注することもできますが、では、登下校時のスクールバスや見守り人員を配置するとしたら、一体1年間いくらのお金がかかってくるのでしょうか?

西部のある地区の試算では登下校する児童を一人にさせないよう見守り人員を入れると3000万とも言われているようです。

現在の各自治体に予算のゆとりはあるのでしょうか?

結局、各家庭に負担増となってのしかかってくるのではないでしょうか?


確かに、ニュージーランドアメリカの一部の州など、14歳以下のこどもを一人にするのを禁止している国もあります。

しかし、その国の治安や、チャイルドシッターの普及率の高さ、また、それに関わる金額の違い、そもそも行政サポートが圧倒的に充実しているなど、背景が大きく異なります。


また、今回の埼玉県の条例案では、条例違反を発見した県民には通報義務があります。これはどこに通報するのでしょう?

通報ではなく、子どもがのびのび過ごせるよう県民が「支援する義務」の方が求められるのではないでしょうか?

条例よりも支援できるような仕組みを先に作るべきではないでしょうか?


親にとっても子どもにとっても不利益しか無いこの条例案は、令和5年10月13日に可決採択さる見込みとのこと。

日本一子育てしづらい埼玉県にならないように、そして全国に同じような条例が広がり、子育てするのを諦めるような国にならないように!!